最終話「鍵赫」

第9話の閲覧ありがとうございます、励みになっております。引き続きよろしくお願いします。
いよいよ最終話。3人の鍵アカウントを解除したところ。
ラストになりますが、ラストでも言います。こちら月ノ美兎様の配信より着想を得ております、みとあーとなのです!
前話はこちら。

最終話「鍵赫」
ーーーーーーーーーーーーーーー
明くる日。
すべての鍵アカウントを解除することに図らずも成功した僕は、今日も大学に来ていた。
ほとんど毎日夜更かしをしていたが、不思議と疲れは感じない。
それどころか、毎日他人と交流することで脳が活性化されているような高揚感で、すこぶる体調が良い。
食事をとっていると、慶子さんが近づいてくる。
「こんにちは、光弘君」
「こんにちは、慶子さん。昨日はごめんね」
僕は、昨日の非礼を詫びた。
非礼と言うには大げさな気もするが、とにかく謝りたかった。
「いやいや、大丈夫だよ~!忙しい時もあるでしょ?」
僕は、ある疑問を彼女にぶつけることにした。
それは「鍵アカはすべて彼女のものじゃないか?」という疑問だ。
決定的な根拠はない。
だがなんとなく、話が出来すぎている気がする。
特に違和感を抱いたのは昨日。
なぜ彼女が、僕のオンライン上の動きを把握できるのか?
オン・オフラインがわかるにしても、誰かとやりとりをしていると思うのはおかしい。
普通に考えれば、鍵アカウントが彼女と同一人物だと考えるのが妥当だ。
SNSのアカウントなんていくつでも作れる時代だし。
「ねえ、昨日なんだけど…慶子さんってアカウント複数持っているよね?」
慶子さんは観念したような表情で、うつむいた。
「いや、責めてるわけじゃないんだ!」
つい声を荒げてしまう。
「うん…バレちゃったかぁ…」
慶子さんは僕の隣に座ると、話を続ける。
「実は、あのグループにいた鍵アカ、全部私なんだ…」
やはりそうなのか。
しかし全部が全部、慶子さんだったとは思っていなかったが。
「そうなんだ…でもなんで、鍵アカなんか使って僕に話しかけてきたの?」
「…光弘君がどんな人か、知りたかったの…でも最初から直接話すのは怖かったから、鍵アカを使ってみたの」
なるほど。
回りくどい気はするけれど、慎重になる気持ちはわかる。
「性的虐待を受けてたって話、ホントなの。だから男の人を見ると震えちゃって…でも、光弘君と話してても、震えなかったの。だから、もっと知りたくて」
「…そうなんだね…話にくいだろうに話してくれてありがとう」
僕は彼女に感謝を込めて、その目を見つめた。
こんな僕に興味を持ってくれている。
それだけでも幸せだ。
その思いに報いたいと思う。
…しかし。
本当の彼女の人格はどこにあるんだろう?
本当の彼女を、僕は見つけられるのだろうか?
どの人格が素の彼女なのか?
恐らく、一生わからないのだろう。
でも、そんなことはどうでもいい。
僕は彼女を精一杯幸せにしたいのだ。
その気持ちに嘘はない。
「さあ、行こう。これからもっとお互いを知らなくちゃ!」
僕は彼女の手を取り、一緒に食堂を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
祝完結!
以上です。
ラストだし、みとあーとだから、美兎様のグッズを紹介するぜ!
読んで頂き、ありがとうございました!感想などコメントいただけると嬉しいです!